昨年10月以来のアイゼンシュタインですが、過去にはアイゼンシュタインの三角数を2話、三角関数を4話に渡り、説明しましたが、無限級数の計算ばかりでチンプンカンプンという人も多いでしょうか。
そこで、前回までを大まかに振り返りますが、アイゼンシュタインはまず簡単な関数1/xᵍでx→x+αmの置き換えを行い、1/(x+αm)ᵍの総和をつくり、円関数が生成されるとしました。
実は、この関数は円関数を作るだけでなく、楕円関数を作り出す力も備え、実際、x→x+αm+βnの形の置換えを行い、mとnの全ての整数に関して、1/(x+αm+βn)ᵍの総和をつくると楕円関数が現れる。
ここで彼は、これを2つのモジュールαとβが伴う2重生成と呼び、有理関数、円関数、それに楕円関数という3種類の関数が共通の泉から生れてくる事になり、そこにアイゼンシュタインの本当の狙いがあったのです。
事実アイゼンシュタインは、円関数との類似性を辿り、g=1,2,…に対し、∑1/(x,w)ᵍ=(g,x)と書いたが、w=αm+βnと置けば、全ての整数m,nを渡る2重無限級数となる。ここで偏微分∂/∂xを∂と記すと、∂(g,x)=−∂(g+1,x)を得る。
因みに、この級数をアイゼンシュタイン級数とも呼ぶが、このまま話を続けます。
結論から言えば、彼は1/p³q³に関する恒等式と上の微分方程式を使い、膨大な量の計算を行い、(2,x)の逆関数が変数2xの楕円関数である事を突き止めた。
一方「その3」で述べた様に、彼は1/p²q²に関する単純な代数的恒等式から単純周期関数(1,x),…,(4,x)を連結する等式を導き、微分方程式に変換します。
それを解くと、(1,x)=∑ₘ1/(x+m)=πcotπxが取り出せるが、この両辺をxで積分する事で1/π・sinπxを表わす無限積∏(1−x/m)を得て、一般にsinπx=πx∏ₘ(1−x/(αm+β))と表せる。
但し、これを指数関数表示すれば、2重無限積にてmに関する積を実行する際の重要な基本公式となる。
ここで更に、(1,x)=πcotπxをxで微分する訳だが、(n,x)が三角関数で一般化され、続いて1/p^μ・1/q^νに関する恒等式を使い、m,nに関する総和を作る。この過程で幾つかの2重無限級数に遭遇するが、其々単純級数の積の形に表示し、”あらゆる”形の円関数の加法定理に繋げ、楕円関数の根拠が見い出せるという訳だ。
前回のおさらい〜無限級数の収束性の考察1
前回「その4」では、”あらゆる”円関数(三角関数)の中でも、余接関数cotxの加法定理と無限級数の収束性について述べた。
アイゼンシュタインは、(1,x)=πcotπxと(1,y)=πcotπyに留意し、等式:∑ₘ{1/(x+m)−1/(y+m)}=(1,x)−(1,y)―(7)を確認する為に、条件収束する筈の単純級数∑ₘ1/(x+m)=(1,x)の諸項を加える順序を変更する時の状況を観察したが、ここで、u=πx,v=πyとおけば、cot(u+v)=(cotu・cotv−1)/(cotu+cotv)という簡潔な形の余接関数の加法定理を得る。
一方で彼は、2つの2重無限級数:∑ₘ∑ₙ1/(αm+βn+γ)²ᵍと∑ₘ∑ₙ1/(αm+βn+γ)²ᵍ⁺¹に立ち返り、「その2」で述べた(1,x)=∑ₘ1/(x+m)=πcotπxをxで微分して得た、(2g,x)と(2g+1,x)に関する円関数で一般化された2つの基本公式を基礎に、2つの無限級数:∑ₘ1/(αm+βn+γ)²ᵍと∑ₘ1/(αm+βn+γ)²ᵍ⁺¹をg>0とg=0に分けて観察した。
まずg>0の時、前者は(定数とみなせる)定乗法子の1/α²ᵍは別として、1/sin²πx{(βn+γ}/α),1/sin⁴πx{(βn+γ)/α},1/sin⁶πx{(βn+γ)/α},⋯という形の関数の集りとして認識され、後者も1/α²ᵍ⁺¹は別とし、cosπ{(βn+γ)/α}/sin³π{(βn+γ)/α},cosπ{(βn+γ)/α}/sin⁵π{(βn+γ)/α},cosπ{(βn+γ)/α}/sin⁷π{(βn+γ)/α},…との関数の集りとなる。
但し、g=0の時は∑ₘ1/(αm+βn+γ)=π/α・cotπ{(βn+γ)/α}となり、mに関する総和が確認できる。
続いて、nに関して無限級数をつくるが、表記を簡単にする為に、πβ/α=η,πγ/α=ξと置くと、nに関する無限級数の一般項は、1/sin²ᵍ(nη+ξ)又はcos(nη+ξ)/sin²ᵍ⁺¹(nη+ξ)又はcot(nη+ξ)との形になる。
そこでアイゼンシュタインは、∑ₙcosʰ(nη+ξ)/sinᵍ(nη+ξ)又は∑ₙsinʰ(nη+ξ)/cosᵍ(nη+ξ)の無限級数を考察し、g>hであれば、これらの級数は諸項を加える順序に依存せずに収束する事を複素指数関数を用いて証明した。
ここでは、無限級数∑ₙcosʰ(nη+ξ)/sinᵍ(nη+ξ)―(8)を取り上げるが、この一般項cosʰ(nη+ξ)/sinᵍ(nη+ξ)=2ᵍ⁻ʰiᵍ×(e^{(nη+ξ)i}+e^{−(nη+ξ)i}ʰ/(e^{(nη+ξ)i}−e^{−(nη+ξ)i}ᵍと表し、隣合う2項の比(商)が1より小さくなれば、無限級数(8)は収束する。
事実、この一般項は増大するnと共に、±e^{±h(nη+ξ)i}/±e^{±g(nη+ξ)i}=±e^{±(h−g)(nη+ξ)i}に向い、その絶対値はM{±e^(±(h−g)(nη+ξ)i)}に向う事が判る。故に、隣合う2項(n項とn+1項)の絶対値の比は増大するnと共に、M{±e^(±(h−g)ηi)}に収束し、更に1よりも小さくなる。またこの級数は絶対収束し、アイゼンシュタインの証明はここで完了する。
以上、g>hの時に無限級数(8)が収束する事を証明できた所で、前回までのおさらいを終えるが、この無限級数(8)の収束性はアイゼンシュタインの楕円関数論の重要なテーマとなる。だが、実際のアイゼンシュタインの証明はくど過ぎて曖昧でもあり、厳密に考察する必要があった。
事実、無限積の対数を取り、無限和となる無限級数を変換する時はその収束性が重要な大前提となり、(ヴェイユがやった様に)その和が項の順序に依存する時、順序入替えに対する総和の違いを厳密に求める必要がある。が故に、複雑になるのは当然なのだが・・・
そこで今日は、無限級数(8)の収束性の続きに入ります。
無限級数の収束性の考察(その2)
次に、g=hの場合だが、これまで無限級数∑ₙ[-∞,∞]cosʰ(nη+ξ)/sinᵍ(nη+ξ)ー(8)はg>hの時には収束し、かつその収束は諸項を加える順序に依らない事が確認された。が、その際の論証を振り返ると、g<hの時には発散する事も同時に判るが、一方でg=hの時には収束するが、諸項の順序に依存し、暫くはg=hの場合を考える。
まず、cos²(nη+ξ)=1−sin²(nη+ξ)に留意すると、無限級数(8)の各項の分子に見られる余弦のh次の幕は、hが偶数なら正弦の幕により表され、hが奇数ならcos(nη+ξ)と正弦の幕の形に表される。
そこで、各項を分母のsinʰ(nη+ξ)で割ると、hの偶奇に応じ、様々な形の項が現れる。例えばh=2の時には、cos²(nη+ξ)/sin²(nη+ξ)={1−sin²(nη+ξ)}/sin²(nη+ξ)=1/sin²(nη+ξ)−1となり、定数項−1が現れる。h=4であれば、cos⁴(nη+ξ)/sin⁴(nη+ξ)={1−sin²(nη+ξ)}²/sin⁴(nη+ξ)={1−2sin²(nη+ξ)+sin⁴(nη+ξ)}/sin⁴(nη+ξ)=1/sin⁴(nη+ξ)−2/sin²(nη+ξ)+1となり、定数項1が残る。
そこで、これらの項を集め、nに関して総和をつくると、すでにg>hの時として処理された級数を得る。が故に、h=2の時なら、∑ₙ[-∞,∞]sin²(nη+ξ)、h=4の時なら∑ₙ[-∞,∞]sin⁴(nη+ξ)と∑ₙ[-∞,∞]sin²(nη+ξ)で、これらはみな収束する。
だが、これらの級数では汲み出せない諸項も残る。それは、h=2の時なら−1、h=4の時なら1で、この定数を無数に加えると発散する。即ち、h=2及びh=4の時には無限級数:∑ₙ[-∞,∞]cosʰ(nη+ξ)/sinʰ(nη+ξ)は発散級数を内包し、が故に、これらの場合は除外する必要がある。
一般に、hが偶数の時には同様の状況が現れるが、hが奇数の時は、少し状況が異なる。試しにh=3の時を考えると、一般項は
cos³(nη+ξ)/sin³(nη+ξ)=cos(nη+ξ)(1−sin²(nη+ξ))/sin³(nη+ξ)=cos(nη+ξ)/sin³(nη+ξ)−cos(nη+ξ)/sin(nη+ξ)と変形でき、これらの項をnに関して加える際、g>hの時の無限級数(8)の考察により、∑ₙ[-∞,∞]cos(nη+ξ)/sin³(nη+ξ)は収束し、有限確定値をとる事が判る。
ここで、残りの和:∑ₙ[-∞,∞]cos(nη+ξ)/sin(nη+ξ)が収束するか否かの検討が必要となるが、一般の奇数の場合の状況も同様である。
無限級数∑cot(nη+ξ)の収束性と指数変換
他方で、cos(nη+ξ)/sin(nη+ξ)=cot(nη+ξ)となるから、収束性の観察の対象となる無限級数は、cot(nη+ξ)との形になる。この級数は諸項を適当な順序に配列し加えると収束するが、その状況は非常に微妙で”最大限の注意を払う必要がある”とアイゼンシュタインは語る。
そこで、cot(ξ+nη)とcot(ξ−nη)を組にして加えると、cotの和積公式:cotA+cotB=sin(A+B)/sinAsinBにより、cot(ξ+nη)+cot(ξ−nη)=sin2ξ/sin(ξ+nη)sin(ξ−nη)との形になり、分子のsin2ξはnと無関係の値で、収束を調べる必要があるのは無限級数:∑ₙ[1,∞]sin(ξ+nη)sin(ξ−nη)である。
ところが、各項の絶対値(M)をとり、無限級数:∑ₙ[1,∞]1/Msin(ξ+nη)と∑ₙ[1,∞]1/Msin(ξ−nη)をつくると、前に考察したg>hの場合から、これらは何れも諸項を加える順序に依存せず収束する。
従って、無限級数:∑ₙ[1,∞]1/Msin(ξ+nη)Msin(ξ−nη)もまた同様に収束する。但し、絶対収束が判明し、変数ξの関数が定まるが、その関数には不連続な点が存在する事に留意する必要がある。
因みに、アイゼンシュタインは指数変換を表示する記号として”∽”(相似記号)を提案したが、指数変換:m∽m+λ、n∽n+νを行うと、αとβは不変だが、γはγ+λα+νβに変換され、γ∽γ+λα+νβとなる。
この(第2種)指数変換により、2重無限級数:∑ₘ∑ₙ1/(αm+βn+γ)ᵍは幕指数g>1では何も影響を受けないが、g=1の時は増分∇=δ·2νπi/αが発生する。但し、各々のnに対してmに関する和は、∑ₘ[-∞,∞]1/(αm+βn+γ)=±δπi/αとなり、この和をν個集めるとその総和は±δνπi/αとなり、その差∇は=δ·2νπi/αとなる。詳しくは、「楕円関数論①」(高瀬正仁著)の第8章「第1種指数変換の効果の観察」を参照です。
そこで、αとβは不変であり、ω=β/αとη=πβ/αも不変だが、ξ=πγ/αは変化し、ξ=πγ/α∽π(γ+λα+νβ)=ξ+λπ+νηとなる。
ここで、mに関する総和を∑ₘ1/(αm+βn+γ)ᵍ=αᵍ∑ₘ1/(m+(βn+γ)/α)ᵍ=αᵍ∑ₘ1/(m+(nμ+ξ)/π)ᵍと変形し、既述の等式:∑ₘ1/(m+(nμ+ξ)/π)ᵍ=cot(nη+ξ)により、∑ₘ1/(m+(nμ+ξ)/π)ᵍ=(−1)ᵍ⁻¹πᵍ/12…(g−1)×∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ)/∂ξᵍ⁻¹が成立する事から、∑ₘ1/(αm+βn+γ)ᵍ=1/αᵍ×(−1)ᵍ⁻¹πᵍ/1・2…(g−1)×∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ)/∂ξᵍ⁻¹を得て、 ∑ₘ∑ₙ1/(αm+βn+γ)ᵍ=πᵍ/αᵍ×(−1)ᵍ⁻¹πᵍ/1・2…(g−1)×∑∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ)/∂ξᵍ⁻¹―(4)との表示に辿り着く。
故に、ξ’=ξ+λπ+νηと置くと、g>lであれば、等式:∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ’)/∂ξ’ᵍ⁻¹=∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ)/∂ξᵍ⁻¹が成立する。
また、g=1に対して、π/α・∑ₙcot(nη+ξ’)=π/α・∑ₙcot(nη+ξ)+δ・2νπi/αとなり、これより等式:∑ₙcot(nη+ξ’)=π/α・∑ₙcot(nη+ξ)+2δπiを得る。ここで、δはω=β/αにおけるiの係数が正であるか、又は負であるかに応じ、δ=−1又はδ=+1となる。
この指数変換による無限級数の収束性の観察は非常に厄介で、書いてて混乱します。
従って、これまでを定理の形に纏めると、”∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nη+ξ)/∂ξᵍ⁻¹という形の和(無限級数)は、g>1であれば変数ξの2重周期関数であり、2つの周期モジュールπとηをもつ。つまり、ξがλπ+νηだけ増大しても、この和の値は変らない。またg=1の時、この和はモジュールπをもつ単純周期関数であり、ξがλπ+νηだけ増大する時、増分2δνi=±2νiを獲得する”―[定理A]となる。
第2種指数変換での収束性の効果
実際に、第2種の指数変換を実行し、収束性の効果を親察する。
そこで前述の記号∽を用いると、指数変換:m∽m+λ,n∽n+νではαとβは不変で、γ∽γ+λα+νβと変換した様に、第2種指数変換では、m∽λm+μn,n∽νm+ρnとの形に表され、αとβは、α∽λα+νβ=a’,β∽μα+ρβ=β’の変換となる。が今度は、γは変らず、ω=β/αとξ=πγ/αは(両辺をαで割り)、ω∽(μα+ρβ)/(λα+νβ)=(μ+ρω)/(λ+νω)=ω’、ξ∽πγ/(λα+νβ)=ξ/(λ+νω)=ξ’と変換される。
ここで、第2種指数変換により2重無限級数:∑ₘ∑ₙ1/(αm+βn+γ)ᵍが受ける変化は「楕円関数①」の第9章「第2種指数変換を巡って」で判った結果と、式(4)によるη=πβ/α=πωから、1/α’ᵍ×∑∂ᵍ⁻¹cot(nπω’+ξ’)/∂ξ’ᵍ⁻¹=1/αᵍ×∑∂ᵍ⁻¹cot(nπω+ξ)/∂ξᵍ⁻¹+∇(−1)ᵍ⁻¹12…(g−1)/πᵍという形の等式を得る。
但し、増分∇は、g=1で∇=−δ·2νπi/αα’·γ、g=2で∇=δ·2νπi/αα’、g>2で∇=0となる。
ところで、上式を∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nπω’+ξ’)/∂ξ’ᵍ⁻¹=(α/α’)ᵍ×∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nπω+ξ)/∂ξᵍ⁻¹+Δとの形に書き直すと、このΔはg=1の時はΔ=−δ·2νγi/α=−δ/π·2νξiとなり、g=2ではΔ=δ·2να’i/α=−δ/π·2ν(λα+νβ)i/α=−2δνi/π·(λ+νβ/α)=−2δνi/π·(λ+νω)となる。またg>2ではΔ=0となる。
ここで更に、(α/α)ᵍ=(λ+νω)ᵍと置くと、上の等式から、α,β,γが消え、ωとξのみの式になる。これより、次に示す定理が得られる。
”無限級数:∑ₙ∂ᵍ⁻¹cot(nπω+ξ)/∂ξᵍ⁻¹において、mは実でない任意の複素数で、ξは任意の複素数とする。また、4つの有理整数λ,μ,ν,ρは条件:λρ−μνを満たすよう選定する。そこで、ωの代りにω’=(μ+ρω)/(λ+νω)とおき、同時にξの代りにξ’=ξ/(λ+νω)とおくと、上記の無限級数には因子:(λ+νω)ᵍが乗算されると共に、増分Δを受け入れる、ここでΔは、g=1の時に−2δνi/π·ξ、g=2の時に−2δνi/π·(λ+νω)、g>2の時は0である”―[定理B]
少し中途半端ですが、指数変換による無限級数の収束性を観察した所で、今日は終りにします。
次回は、アイゼンシュタインのテータ関数について述べたいと思いますが、2重無限積において第2種指数変換を行うと、このテータ関数に到達する訳ですが、これはヤコビのテータ関数と同等のものでした。
こうしてみると、アイゼンシュタインの三角関数の歩みは項を踏む様に、一歩一歩と楕円関数論に近づいていくのが判りますね。