どうやら私の予想は即効性というより、遅効性に長けるらしい。
前回「その27」でも書いたが、今年の7月の時点で”大谷の二刀流の限界”を記事にした。が、正直ここまで持ちこたえるとは全くの想定外だった。
というのも、本当はもっと早く沈没すると思ってたからだ。そうした私の予想を覆したのが、6月と7月のまるで暴走特急と化した大谷の快進撃である。
そんな大谷の二刀流の出発はとても危いものだった。メジャーの質の大幅な低下と、アリーグ西地区というレベルの低い地区のそれも万年Bクラスのチームを選んだ事が、二刀流を軌道に乗せる大きな原因となったように思う。
少なくとも70年代のメジャーでは、投手大谷が打席に立つ事はなかっただろうし、もっと言えば、元祖二刀流であるベーブルースの時代なら、メジャーリーガーになる事すら叶わなかったろう。
エンゼルスのミナシアンGM、(日本時間)24日のレッズとのWヘッダーに連敗後、緊急会見し、第1試合2回途中で降板した大谷翔平選手の”右肘の内側側副靱帯の損傷が判明した”と発表した。
”第2試合の前に検査した結果、間違いなく断裂はある。今季はもう投げさせない。現時点で手術を受けるかどうかは不透明だ”
大谷は2018年10月も右肘靱帯を修復する手術を受け、復帰まで来年の7月までを要した。
SNS上では”これで大谷は大金を失う事になる”や”大谷は壊れ、トラウトも壊れた。野球の神様を呪う”との悲痛な叫びが拡散した。
また、エンゼルスへの恨み節も留まる事を知らない。”ゴミのようなチームを長く先頭で引っ張ったせいだ!エンゼルスは終わった!大谷も終った!そしてプレーオフにも行けない”更に”エンゼルスは大谷をトレードせず、FAになる最後までこき使い、ケガを負わせた。何とひどい球団だ”(中日スポーツ)
フロントの責任か?自己管理の甘さか?
「ノーラン・ライアン」に寄せられたコメントにある様に、なぜ右肘靭帯断裂が判ってながら、(フロントは本人の意向を受けてというが)第2試合に出場させたのか?
腕の疲労ではなく肘の損傷だった事は明白だったのに、それでも監督は大谷を出場させ続けた。
以前にも右肘損傷で手術を受けたが、その時は軽い断裂だったので早い時期に復帰できたが、今回は全く同じ箇所を損傷(断裂)した。多分、投げれる様になるには(なったとしたらだが)相当の時間を要するであろう。
二刀流は実質の無効になり、膨れ上がったFAでの大谷の市場価値は急落する。
一方で、けが人続出のエンゼルスだが、オハピーもネトも一度痛めた箇所を後に出場させて悪化させた挙げ句、長期離脱になった。トラウトも骨折から復帰して、僅か1試合で負傷者リスト入りした。
GMは大谷を”精神力の強い選手”と感心してたが、二刀流大谷を育て、挙げ句は潰してしまったフロントの責任はどう問われるのだろうか。その責任の重さは、引きつったGMの表情からも明らかだろう。
確かに、今回の件は球団にその多くの責任がある。が、厳しい言い方をすれば、大谷にも責任はある。
第2試合の出場だが、試合前には大谷にも右肘の損傷は伝えられていた。にも関わらず、彼は出場を志願する。この時、時間を掛けて精密検査し、ケガの重大さを伝えてたら、出場はまずなかった(多分)。
因みに、26日からのメッツ戦には打者として出場するという。冷静に考えなくとも、それにFAを考えれば、今は休養を兼ねて精密検査を受けるのがベストな選択なのに、敢えて試合に出ようとする。
日本的に言えば”困難に立ち向かう逞しい精神力の持ち主”となるが、アメリカ的に言えば”リスク管理がなってない”となる。
全く、バカとアスリートは叩いても治らないとは、よく言ったもんだ。
事実、こうした万年Bクラスのチームは、フロントも選手も伝統的にリスク管理が甘い。故に、いつも同じパターンでチームも選手も撃沈される。でも、まさかこんな事で大谷が沈没するとは想定外でもある。
ある日突然投げられなくなり、ある日突然打てなくなるというのも、天才アスリートの悲しき宿命だが、それじゃあまりにも寂しすぎる。
最後に〜日本人は3年でポシャる
山本五十六は太平洋戦争に関して”3年間は暴れてみせましょう”と語ったが、後に”半年”に修正された。事実、その通りになった。
これと同じ様な事が、今の大谷には起こりつつある。
打撃の神様ベーブルースは(外野を含めた)実質の三刀流だったが、5年で限界を迎えた。その後はヤンキースで(実質)打つだけに専念し、15年もの間、メジャーのトップ・オブ・ザトップに君臨し続けた。
大谷の場合、実質3年間で二刀流を終えそうな勢いだが、逆を言えば、3年も持った事は奇跡とも言える。それだけ、日ハム時代に栗山監督が大事に育ててくれたお陰もあるだろうし、本人の努力の賜物でもあろう。
それ以上に、二刀流が成功する程に、いや実質マイナーレベルにまで落ち込んだMLBのレベルの低下もあるだろう。事実、”高校野球を見てる様だ”の声も上がっている。
野茂以降、多くの日本選手がメジャーに挑戦したが、日本人が撃沈される度にアメリカの手厳しいメディアは”日本人は3年でポシャる”と小馬鹿にした。しかし今に思えば、大谷も例外ではなかったように思える。
崩壊の序曲は今始まったばかりである。大谷が二刀流に拘り、全てを台無しにするのか?冷静に賢く振る舞い、その後の野球人生を巧く引き伸ばすのか?
全ては大谷次第である。