象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

鏡張りの部屋。その11〜監禁された男の獣性と女の駆け引きと〜


 一ヶ月程間が空いたので、ざっと登場人物の紹介をします。

 主人公:中年の男ダーレム
=妻と二人の娘を持つ一家の主だが、仕事でヘマをし?怪しいホテルに迷い込む。

 ダーレムの妻:シルフィー
=旦那が半年以上も音信不通の行方不明になり、流石に寂しくなり、ダーレムの親友と不倫関係になる。

 ダーレムの長女:スージー
=父親に不信感を抱き、部屋に引きこもる微妙な年頃の娘でもある。

 ダーレムの次女:ルーシー
=家族の中で唯一父親を信じて疑わない無垢な少女です。

 ダーレムの親友:ラウンダーズ
=妻の不倫相手で、再婚も殆ど決まってる。

 ダーレムの愛人:レオニー
=高級娼婦だが、情に厚く金銭面でダーレムを常に支える。二人の娘は体外出産だが、彼女が資金を捻出した。

 ホテルの受付の娘:カミーユ
=まだ17だが、離婚と中絶の経験あり。抜群のプロポーションを誇り、ダーレムと関係を持とうとする魔性の女。 

 ホテルの老支配人=晩年のゾラをモデルにしたいんですが。

 私立探偵マーロウ=妻シルフィーが一度は依頼するも、迷宮入りするが。何とか名誉挽回を図る。もうすぐ登場かもです。


 前回は、受付の若い娘カミーユとダーレムとの絡みが期待できそうな雰囲気でしたが。何とか男が踏みとどまります。


 男は独りになり、頭の中を整理し、仕事帰りの後の記憶をノートにまとめる。しかし、なかなか戻らない記憶もある。

 ダーレムは携帯をとり、妻に電話を掛けるも、圏外で繋がらない。フロントにに行き、急いでカミーユを大声で呼んだ。


 女は起きたばかりで、スッピンだった。バツの悪そうな表情で呟く。

何なのよ、まだ朝の6時よ。あまり大げさに騒がないでね。火事かと思ったわ。
で、要件は何?
ヤりたくなったの?こんな時間に?


女はニヤリと微笑む。

《全くコイツは魔性の女だ》


男は真顔で応えた。

そういうお目出度い話じゃない
携帯が繋がらないんだ
昨夜は繋がったのに
家族との連絡がとれなきゃ
監禁状態と同じじゃないか


女は真顔になった。

アンタまだ解ってないのね、自分の置かれた状況を
昨夜、アンタも言ったでしょ?
アンタは命を狙われてるの
それでアンタは死んだ事になってるの
そして、このホテルに隠れてる訳
そういう事
アンタも解ってることでしょ?
よく考えてよ、思い当たる節がある筈だわ


男も真顔になった。

嗚呼、わかってる
それで、俺はここに監禁されてんだものな
でも携帯すら、家族との会話すら自由に出来ないのか
それに、俺を守ってどうしようとする気なんだ
金も社会的地位もない俺を監禁して
何の役に立つんだ
アンタらに利益をもたらす何かが
今のオレに何処にあると言うんだ
オレの人生は運命は俺が決める
どうせ、オレは死んだ事になってんだろ?


女はニヤリと微笑んだ。

ここでは話せない事も沢山あるから
あなたの部屋に行きましょ
誰が聞いてるか、わからないわ
先に行ってて、顔を洗ってくるから
このスッピン顔じゃ、会話もままならないでしょ?


男に部屋に戻る。
しばらくして、女が入ってきた。
今朝は露出度の低い身なりだ。
男は少し安堵した。
こんな追い詰められた状況で、
毎回毎回誘惑されたら、何を仕出かすか。
追い詰められた人間ほど危険な獣はいない。


正直言うとね
このホテルでは、携帯は自由に使えないの
使えたとしても、全ては傍受されてるわ
アンタが奥さんや子供と話してた事も
全て傍受されてるの
アンタを狙ってる連中が
貴方の居所を、今も必死で探ってるの
アンタは時限爆弾みたいなものよ
勝手に行動されても困るのよ


男は不貞腐れそうに笑った。

時限爆弾か、そいつはいいや
プルトニウムじゃなくて良かったな、お嬢さん
でも、今俺が死んだら、
迷惑が掛かるのは、オレの家族だけだろうが
アンタらに何の関係が利益がある?
アンタは何か知ってるな?
正直に白状しないと
俺とともに、ぶっ飛ぶぜ、
オレは時限爆弾なんだろ?


男はいきなり、女の生首を締め上げた。
かつては柔道のカレッジ王者だった
男は女を片手で軽々と宙吊りにした。

女は身動きも悲鳴も挙げられない。
直に唇は紫に変色し、口からは泡が溢れた。

男は握力を緩め、ベッドの上に女を放り投げた。

悪く思わんでくれ、殺す気は毛頭ない
殺す気があれば、昨晩ヤッた後に殺してる
さあ,全てを白状してもらおうか、お嬢さん
それとも、もう一度泡吹くかな?
犯して、いい思いして、この4階の部屋から
突き落としてもいいんだぜ
さあ、どちらにするお嬢さん?


女は無垢で無邪気な17歳の娘に変わっていた。
瞳は怯え切り、顔色は真っ青だ。
身体は全身こわばり、直ぐには言葉が出ない。


わ、わ、わ、わかったわ
で、で、でも、乱暴はなしにして、
お願いよ、まだこの歳で死にたくないわ
ホントの事話すから、落ち着いてよ
言っとくけど、私は貴方の味方なの
それだけは、どうか信じてちょうだい
昨晩は、貴方をどうしようという気はなかったの
それだけは信じて
貴方を救いたかったの
貴方の苦痛と苦悩を共有したかったの
そういう私だって追い詰められてる身だから
貴方の気持ちが痛いほど、理解できるの
それだけは信じてちょうだい


男は冷静になり、女の涙を拭いてやった。
すると女はヒクヒクと泣き始めた。


悪かった
ついカッとして、悪い癖が出ちまった
でも、信じてくれ、危害を与えるつもりはなかったんだ
昨晩、君を犯さなかったのは、
情動を抑える自信がなかったからさ
でも、今は冷静さ
君の首を締めた時、オレは冷静でいられた
君の瞳の奥に潜む何かが見えたんだ
君は死ぬかと思ったろうけど
オレが本気だったら、既に死んでる
締め上げた瞬間にね
ホントに悪かった、心から謝るよ


女は男に身体を預けた。
その時は、彼女の全てを男に捧げた様に見えた。