象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

4630万円の行方〜口座凍結は誰が為にある


 先月8日に、山口県阿武町が新型コロナの給付金4630万円を誤って振り込んだ問題で、警察は18日、誤振込である事を知りながら現金400万円を決済代行業者に振り替え、利益を得た疑いで24歳の男を逮捕した。
 メディアは、男がつぎ込んだとされるネットカジノの分析を元に、銀行口座の入出金記録を公開し、男の金使いの荒さを指摘するが、今回は明らかに自治体や銀行の対応にも問題がある。

 勿論、誤振込と知りながら、”振り込まれたんだから俺の金だ”と(僅か10日間で)一気に使いまくった男は明らかな犯罪だが、その間に何もしなかった(いや出来なかった)自治体や銀行にも大きな責任と慰問点がある。
 マネロンなど金融犯罪を未然に防ぐ為の銀行が果たす役割は大きい筈だ。
 実際、海外送金のやりとりは大変厳しく、取引の度に銀行から一々電話が掛かってくるという。或いは、まとまったお金が口座に振り込まれたりすると、これまた銀行のチェックが入る。
 今回の件も、疑えば(コロナ陰謀説同様に)キリがない。役場と銀行と男との裏取引が(万が一だが)あったとしても、そういう事を未然に防ぐ為にも、銀行は常に目を光らせておく必要がある。

 そういう私も、お袋が他界した時、何の知らせもなく口座を一方的に凍結され、痛い目にあった経験がある。だったら、事前から何度かに分け、自分の口座に移し変えれば・・とも思うが、銀行は取引を制限する場合があるという。
 それだけ普段から、大金の取引にアンテナを張り巡らす銀行が、今回の件でなぜ男の口座凍結に踏み切れなかったのか?
 自治体と連携してれば、明らかに誤振込な事は調べなくてもわかる筈。
 その瞬間に(誤振込の可能性があるとして)男の口座を凍結してれば、被害は最小限に食い止められ、男が容疑者になる事もなく、役場も恥を晒す事も大きな被害を被る事もなかっただろう。
 ただ今回のように、4000万を超えるお金が自治体から振り込まれた事に、銀行は何の反応もなく、何の確認もされなかったというのも不自然な気がする。


銀行は何故動かない?

 AmebaTVという番組では、様々な意見が出されたようだが、ここでは私の身勝手な主観を述べたいと思う。
 ”行政から個人という点で銀行側は確認はしづらい”という声もあるが、振込時にどんなエラーが生じたのかを確認する必要はあるだろう。
 これが欧米なら男性の口座をすぐに凍結したであろう。それに田舎の地銀であれば、役場との繋がりも密だろうし、心配であれば、金融庁に電話1本かければ、それで済んだ可能性もなくはない。
 4千万以上の取引であれば、銀行は(普段なら)チェックを入れる筈のに、今回の問題で口座凍結ができない道理はない筈だ。
 仮に、裁判になって”これは俺の金だ。口座凍結は無効だ”と主張しても、誤振込は自明で、それを無断で使えば明らかに犯罪である。

 ある弁護士は、”銀行はリスクを取らないし、責任を取りたくないから、相手にしない”と言うが、それは明らかに愚論である。
 勿論、弁護士が間に入り、”1/10の463万やるから4167万は返しなさい”と、司法取引の形になる可能性もあったかもだが、この方がずっと被害は小さいし、お互いに合理的でもある。
 事実、役場の責任はそれだけ重いし、結局、口座凍結は本人の為でもある。

 ”男にばかり注目が行き過ぎでは?”との幼稚な意見もあるが、誤振込と知りながら、市の説得にも応じず、僅か10日間で4630万近くをギャンブルに注ぎ込んだ男に注目が集まるのは当然だ。
 不運にも(いや自ら)容疑者となった男は、警察に出頭し、”全額カジノで使った”と口を割った。
 一方で、何も出来なかった自治体は”(弁護士費用を含む)5100万を要求”して提訴した。
 これに対し男は、”(少しずつだが)返済する”意思を示したという。

 結果から見れば、全くの??である。
 つまり、4630円の誤振込さえなければ、男の人生は狂う事もなかったかもしれない。
 いや、口座凍結さえしてれば、(カジノに手を染めた)男と(初歩的なミスを犯した)自治体の被害は最小限で済んだかもしれない。
 役場は、銀行に463世帯分の振込先を記録したフロッピーディスクを提出した筈だが、(銀行には)1世帯だけ記録された振込依頼書を誤って提出されていた。これが誤振込の真相である。
 銀行も銀行で、こんな初歩的なミスに気付く事なく振り込んだのだから、男に全ての責任を背負わせるのは、勘違いも甚だしい。

 そういう私だって、いきなり4千万以上も振り込まれたなら、それがたとえ誤振込であったとしても、神の御加護とみなし、全額とは言わないまでも、多少は羽根を広げるだろう。
 人間とはそういう生き物なのだ。
 人はいとも簡単なミスをする。大事な時ほど、慣れない事をする時ほど失態をしでかす。
 事実、今回のミスは、1×10=1×4630というレヴェルのミスである。
 しかし、どんな大きなミスでも、それを後悔するより、臨機応変の咄嗟の行動の方がずっと安く付く。
 そういう事を教えてもらった事件でもある。


追記〜空白と謎の10日間

 ”とっさの早い行動が必要”と言って、終わりにしたかったが、誤振込をした阿武町の花田町長が24日、”現時点で計4299万3434円を法的に確保した”事を明らかにした。
 容疑者の男は34回にわたり、約4633万円を引き出したが、その出金先はデビット決済と決済代行会社の3社。デビット決済には約340万円が、A社には約3592万円が、B社とC社は計700万円が振り込まれた。
 決済代行会社3社の口座は2つの銀行にあり、そこで町側は、国税徴収法などに基づき、誤振込の回収に乗り出した。
 容疑者と3つの代行業者には委任契約があり、公序良俗に反する取引”とし、誤振込から20日後の4月27日に3つの口座の差し押さえを申し立てていた。一方的2つの銀行にも、”疑わしい取引”として金融庁への届けや3社の情報提供などについて対応を迫った。
 3社の事務所などが判明すると、逮捕翌日の5月19日に東京の3社の事務所に行き、差し押さえと取り立て命令の書類を渡した所、翌日に3社から町の口座に入金があった。
 町の代理人は”なぜか、満額払ってきた”と話した。しかし、残るデビット決済の340万は、現時点で回収できていない。

 容疑者は”オンラインカジノで全部使った”などと言ってたが、代理人も”使ったと言ってるが、何か財産的価値のあるものが手元に残っている状態ではない”などと説明している。
 しかし、容疑者から決済代行に移動した金はどんな状態なのか?実際にカジノで使ったのか?残金の正確な金額ども含め、なおも多くの疑問は残る。
 町が9割超の回収を確保した事で、大きな山は超えた感もあるが、容疑者が実際に返済すべき金額はどうなるのか?また、決済代行会社はどんな意図で町に全額入金したのか?容疑者がカジノで大儲けした可能性はないと言い切れるのか? 
 仮に、決済代行会社は損失を被ったのなら、”会社が容疑者に請求する可能性もあるのでは?”との指摘もある。
 以上、「阿武町長、4299万円確保も・・・」からでした。

 しかし事件の発端は、(初歩的すぎる程の)町のミスから始まったものである。 
 興味を持つ程に、情けない事件でもある。
 わざわざブログにする程でもないが、最初に口座凍結にしとけば、ここまで大騒ぎになる事も、町の職員や容疑者がここまで責められる事もなかった。
 3億円強盗みたいに、4630万を持ち逃げして姿を眩ませた方が、(阿武町民には気の毒だが)ずっと絵になる事件だったかもしれない。

 全く、謎と疑惑の10日間である。
 個人的には、何らかのサプライズがほしい所でもある。