
私は給食の牛乳が大嫌いだった。
とにかく”薄くてマズい”のだ。保険の先生に何度訴えても、”そんな事したらメーカーは皆潰れるでしょ。あり得ない事です”と突っぱねられたもんだ。事実、”給食の牛乳は薄い”でネット検索しても、殆どが”あり得ない”との声である。
ただよーく調べてみると、”牛乳水増し事件”というものが、過去にはあったらしい。
これは全酪連史上最大の不祥事とされ、1993年より断続的に、長岡工場及び宮城工場が水で押し流した製造ライン残存乳へ脱脂粉乳や生クリームを混和し、成分無調整牛乳として出荷していた。熾烈な価格競争に苦しみ、市乳部門の不採算・継続の是非が論じられる状況下で起きた事件だが、ゼンラク牛乳はその後、数年間に渡る苦渋の赤字経営を続けたという(漂流乳業より)。
私が小さい頃、薄々と感じてた”マズい牛乳”の疑惑が現実の危機になったとは、こういうものだろうか。
宮城県内の小中学校で、今月の25日の給食に出された牛乳を飲んだ多数の児童生徒が腹痛などの体調不良を訴えていた事がわかった。県内8市町で少なくとも671人にのぼるとされるが、重篤な症状は確認されていない。
仙台市では、児童や生徒計337人が腹痛や嘔吐などの症状を訴えた。牛乳は市立幼稚園を含む133校・園に提供され、このうち小学校22校、中学校17校で体調不良が確認された。
牛乳は東北森永乳業の仙台工場が24日に製造。25日に12市町の258校に提供され、飲んだ子供から”味が変だ”との声が出ていた。同社は残ってた牛乳を調べたが問題はなかったという(読売新聞)。
食の安全と食中毒
私達はいつのまにか、食の安全よりも食の安さや見た目の豪華さや派手さを追求する様になった。国産の食を支える事が困難になってる中、日本の食に関わる人々が根本的な意識改革をする事に警鐘を鳴らす専門家も少なからずいる。
つまり、農場から食卓に至るまでの食の安全を確保するシステム構築をしないと、子供たちの健康に大きな影響が出る可能性があるのではないかと。事実、世界的に見ても食の安全性に対する日本人の危機意識は低いとされる。
確かに、冒頭で述べた”水増し”事件はメーカーにも消費者にも深刻な状況をもたらしたが、今回も同じ様な事が起きてしまった。
しかし、2000年にも”水増し”牛乳による集団食中毒事故が起きていた。雪印乳業大阪工場で製造された雪印低脂肪乳を飲んだ子供が嘔吐や下痢などの症状を呈し、1万3000人あまりの被害者を出した集団食中毒事故である。
以下、「日本人が還元乳と普通牛乳の味の違いに気づかない残念な理由」より一部抜粋です。
いかなる理由があっても、この様な”手落ち”が生じる事は許されないが、事故の背景には、飲用乳市場における競争の実態がある。
我が国のスーパーは過酷な価格競争により、消費者に牛乳価格を転嫁する事が困難である。だが、乳業メーカーに対しては圧倒的な取引交渉力を持ち、メーカーの価格転嫁を許さない。
つまり、原材料が高騰しても購入価格は上げ難い。原材料高騰のしわ寄せに苦しむ生産者の窮状を救う為に、メーカーが酪農家に払う乳価を引き上げる場合もあるが、メーカーが板挟みになり、赤字に苦しむ。
因みに、牛乳の赤字構造では製造原価が1L150円程度なのに、スーパーへの卸値は144円程度で、1本6円程度の赤字が生じてしまう(上図参照)。勿論、赤字になるとて安全性を犠牲にし”手抜き”していい事にはならない。
故に、この様な一部にしわ寄せが蓄積する市場構造の改善が求められる。
”水増し”牛乳とマズい”還元乳”
一方で実は、食中毒事故が発生したのは生乳から製造する”普通の”牛乳ではなく、脱脂粉乳とバターと水から戻した”還元乳”にあった事に注目する必要がある。
普通牛乳で赤字になる分を還元乳の販売によって回復する構造こそが、この食中毒事故に繋がった。しかし、脱脂粉乳に異常が生じ、牛乳で食中毒が起こるというのは、普通の先進国では殆どあり得ない事。というのも、還元乳は殆ど存在しないからである。
通常、還元乳は生乳が不足してる途上国で見られる現象で、十分な生乳供給のある先進国の中で、我が国だけの特異な現象である。
他の国々の様に、余剰乳製品を海外で処分できない我が国にとって、還元乳が需給調整機能を果たす役割も無視できない。だが、メーカーが還元乳でそれなりの利益を得ていたのも悲しい事実ではある。
それは、原価の安い還元乳が普通牛乳とあまり変わらない値段で売れたからで、多くの消費者がそれを還元乳と知らずに購入してたからでもある。
一方で、牛乳消費は全体としても伸び悩み、特に問題となった”還元乳”は”成分調整乳・加工乳”と記され、しばらく落ち込んだまま回復しなかった。全般的な牛乳消費の停滞の要因は様々に考えられ、食中毒事故だけで説明できるものではない。だが、還元乳について、これ程までに消費が回復しなかったのは、食中毒が起きた事以上に、事故で初めて”還元乳”が広く認識された事にある。
つまり、それまでは曖昧な表示で”消費者をごまかしてた”が故に、消費者の反発も加わり、還元乳に対する拒否反応が増幅されたとも言える。
ではなぜ、日本の消費者は味の違いで還元乳と普通牛乳が区別できないのか?
ここにも、根本的な大きな問題が惹起(じゃっき)される。日本の消費者が味の違いで還元乳と普通牛乳が区別できないのは、日本では120℃~150℃、1~3秒の超高温殺菌乳が大半を占めるからだ。
つまり、日本人が飲んでいるのは普通牛乳であっても、(超高温殺菌により)風味の失われた牛乳に慣れてしまい、還元乳との味に差を感じないのだ。アメリカやイギリスでは、72℃・15秒~65℃・30分の殺菌が大半だから、日本の普通牛乳とはまるで別モノとなる。
この超高温殺菌というのは経営効率からなされた選択に他ならないが、この製法に慣れてしまったメーカーも悪い。また消費者が”マズい牛乳”慣れて、本当の牛乳の風味を判別できない事もあり、今更業界全体が欧米の低温殺菌に流れる事は不可能との見解も多い。
だが、消費者の味覚をそうしたのも、この業界である。
更に重要な事は、欧米から”刺身をゆでて食べる”様なものと揶揄される飲み方の問題だけでなく、超高温殺菌により、①ビタミン類が最大20%失われる②有用な微生物が死滅する③タンパク質の変性によりカルシウムが吸収されにくくなる、などの栄養面の問題が指摘されている。
消費者の健康を第一に、もう一度この国の牛乳のあり方を考え直してみる姿勢が必要ではないだろうか。
以上、PRESIDENTOnlineからでした。
最後に
悲しいかな、ご指摘通りの不安と危機がそっくりそのまま再現された気がする。
単に貧しいからか?単なる企業の怠慢か?それとも、味覚音痴に成り下がった日本人の間抜けさか?
私は、給食の牛乳が”薄くてマズい”事を小さい頃から確信していたので、チーズやヨーグルトは好きだが、牛乳は(特に加工乳)は殆ど飲まなかった。
そういう意味では、欧米人と同様の味覚を持ってた事になる。確かに、”茹でた刺し身”を食って食中毒になったら、洒落にもならない。
”還元乳”という言葉は今回初めて知ったが、”やっぱり”かって感じではある。
他方で、子供によっては”薄い牛乳が飲みやすい”との声もある。
しかし、メーカーがやってきた事は加工乳とは聞こえはいいが、還元乳という名の”水増し”牛乳だったのだろう。
冷静に考えなくても、酪農家からすれば、こうしたメーカーの失態は許せる筈もない。だが、消費者が安さをひたすら追い求め、メーカーが採算を重視するあまり、皮肉にも自分で自分の首を絞める結果となった。
この島国の村民は、食に安さを追求する割には、高く値の張る外食に群れを成し、食の安全は後回しである。メーカーも同様に目先の損益に執着し、こうした事件に遭遇する度に赤字に陥る。やがて、日本の食は崩壊し、(安全性も含め)全てを外国に依存するようになる。
こうした負の循環を断ち切らない限り、同じ様な失態は延々と繰り返される。
少なくとも、給食の牛乳がいや加工乳が”薄くマズく”感じる位の味覚は、自分を護る為にも持ちたいものだ。