象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

プーチンが燃え尽きるとき〜「象の消滅」と狂人の消滅


 象の消滅という村上春樹の短編小説がある。ハルキストでなくても、有名な短編なのであらすじくらいは知ってる人も多いだろう。

 ある日、象が突然消えた。
 メディアは”象が脱走した”と大騒ぎするが、脱走でない事は明らかだった。
 象の足には鉄の足枷がかけられたままで、鍵は消防署と警察署に預けられている。象の飼育員が逃がした訳もなく、象が通れる程の大きさの脱出経路などもない。更に、足跡も全く見当たらない。
 不思議な事に、象が小さくなり飼育員が大きくなり、象と飼育員の大きさが同じになった時、象も飼育員も消え去ってしまったのだ。
 動物園が閉鎖し、歳を食ってどこも引き取ってくれない老象と70を過ぎた飼育係。仕方なく町が引き取るが、”小さな町に老象”とは明らかに整合性を欠く。 
 以下、「象の消滅は不思議で寂しくミステリアス感100%」を参考にし、思い切り主観を交え、プーチン消滅”のシナリオを探っていきたいと思います。


プーチンの消滅

 ”どんな素晴らしいデザインも、周りとのバランスが悪ければ死んでしまう”
 だったら、象と飼育員のバランスはどうだったのだろう?
 確かに(互いに老いてはいるが)、象が大きいままで飼育員が小さいままだったら、整合性というバランスはとれてただろう。
 しかし、象が小さくなり飼育員が大きくなった事で、生き物としての整合性が崩れ、消滅するしか他に選択肢がなくなったとしたら?

 そこで象をロシアに、飼育員をプーチンに置き換えて考察してみる。
 プーチン(飼育員)とロシア(象)のバランスはどうなのか?
 つまり、プーチンがロシアから消滅していくのか?それとも消滅させられるのか?いや、小説の様に両方とも消滅するのか?

 確かに、プーチンウクライナ侵攻は明らかに整合性も統一性をも欠くし、国際世論の猛反発と欧米の制裁もあってか、ロシア国内の全てのバランスは大きく崩れ去るだろう。
 2020年にロシアの大統領に君臨して以来、プーチンの野望と支持率は侵攻(紛争)を仕掛ける度に大きくなった。しかし、ロシアの経済力と国力は次第に小さく弱くなっていく。
 つまり、プーチンの野心とロシアの経済と国力のバランスが整合性を欠き、大きく崩れてしまった。故に、「象の消滅」が如くプーチンもロシアも消滅するのだろうか。
 1991年は、旧ソ連の崩壊だけでロシアの消滅は免れたが、村上春樹のシナリオ通りになれば、2022年はそれだけで済まない様な気がする。
 つまり、プーチンとロシアの消滅である。


日常というバランスを欠いた妄想

 私達は”あたりまえ”という日常の中に包まれて生きている。
 その日常は、当分は消えそうもないくらいしっかりした堅固なものの様に思える。
 しかし、消滅という言葉を使う事が許されるのなら、当り前が消滅するのは、意外にも簡単な事かもしれない。
 それは、時の流れが消滅を容易にするからだろう。
 プーチンの野望も大国ロシアも、今は当り前の様に何の疑問もなく存在する。しかし、明日いや明後日、当り前の様に存在するかどうかは解らない。
 「象の消滅」みたいに、不可思議な現象と共に、呆気なく消滅するかもしれない。

 我らはノホホンと便宜的な世界の中で生きている。その便宜的な世界の整合性が崩れたら、我らは100%消滅するのだろうか。それとも、「理不尽な進化」(吉川浩満 著)にも書かれてある様に、(99.9%の種は死滅し)ランダムに撰ばれた0.01%の種だけが生き延びるのだろうか。
 一方で、小説に登場する象と飼育係とのバランスはどの様に変化していったのか?”便宜的な統一性”は、どこでそのバランスを崩したのか?
 ひょっとして動物園が閉鎖した時に始まってたのかもしれないし、象が飼育員と出会った時かもしれない。それとも最初から消滅する運命にあったのかもしれない。
 しかし、老象と老人が静かに消滅していくプロセスは、進化という点で考えればごく当然の事かもしれない。
 同じ様に、プーチンの野心がプーチン自身を燃え尽くし、ロシアと共に消滅するというプロセスも、ごく自然な事なのかもしれない。
 こうした消滅は、便宜的で日常の我々の世界では、とても不可思議に思えるだろう。
 しかし、我々が当り前と思ってる日常は(整合性を伴い)バランスよく完結してるのではなく、複雑多岐に絡み合う(一見)便宜的見える、一種の妄想(幻影)なのかもしれない。

 プーチンの野望が単なる妄想だとしたら、少しでもバランスが崩れれば(いや、崩れないとしても)、一気に自らを燃え尽くすだろう。
 自ら描いた野望により、自分が燃え尽くされるのから、それこそ整合性が見事にとれた消滅もない。
 所詮、人類が生きる世界というのは最初から整合性の崩れた幻影なのかもしれない。
 そう思うのは私だけだろうか?