象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

大谷の躍動とバットの進化〜されど大谷”その17”


 規格外の打球というよりも、想定外のボールの飛び方に衝撃を受けた。まるで、ビックリボールのような飛び方に、我が目を疑った。
 メジャー初となる先頭打者本塁打で先制。右翼の電光掲示板の遥か上を越え、天井から吊るされたキャットウオークに当たる1発は、飛距離453ft(138m)と米メディアが報じた。
 マドン監督は、”申し訳ないが、453ftな筈がない。ここに長くいたが、練習でもあんなのは見た事がない”と語り、ファンの間でも”553ft(168m)でもおかしくはない”との声が上がってる。

 大谷のスイングはそんなには強くはなかった。少なくとも500ftを超える衝撃弾ほどには強烈ではなかった。タイミング的に見てもドンピシャという感じでもなかった。
 引退直前の松井が、同球場の右翼上段に突き刺した事があったが、あの時の方が力感が漲っていた。
 今シーズンは、審判団による大袈裟なボールの検査といい、飛び過ぎるボールといい、何か勘ぐる所も無きにあらずだ。
 2019年頃からMLBは”飛びすぎる”ボールを使い始めた。「飛ぶボール」でも書いたが、毎日がHRダービーを見てるみたいで、メジャーの醍醐味と真剣味が台無しになった様に感じていた。

 勿論、大谷の連夜の活躍は嬉しいし、頼もしくもある。しかし、ここまでボールが飛びすぎると、私が子供の頃に憧れたメジャーの野球と同じものとして見る事ができなくなる。
 固くて石みたいな飛ばない筈のボールを飛ばすから、そこにプロフェッショナルの流儀があった。打撃練習の様な雑な試合では、ファンを魅了する事は出来ない。
 確かに、大谷のスィングはパワフルで高速で完璧である。少しタイミングがずれても打球速度は180kを超えるし、飛距離も段違いだ。
 しかし、それにしても今季は飛び方が違う様にも思える。


夢に出た大谷のバット

 朝早くから、MLB中継を見てて強くそう思った。
 朝までずっと起きてたから、大谷の衝撃弾を見た後、何だか急に眠くなった。
 すぐに眠りについた。
 目が覚めると、目の前に大谷翔平がいた。彼が夢に登場したのは、先日の「その16」以来、これで5度目になる。
 彼は自慢のバットを気持ちよく振り抜いていた。自画自賛のアーチに、心底酔いしれてた様にも思えた。
 私は彼に近づき、茶褐色のバットを触らせてもらった。ごく普通のバットだった。ただ、芯の部分が少し長めで、思った以上に細く感じた。
 大谷は私に近づき、何かを囁いた。
 ”思ったよりも軽いでしょ?多分チームの中でも軽い方じゃないのかな”

 私は何故か、エンゼルスのベンチ内にいた。他の選手のバットを触らせてもらった。確かに大谷のバットは軽い方だった。
 調子こいた私は、スーパースター・トラウト選手のバットを触らせてもらった。流石に彼のバットは重かった。
 顔を上げると、目の前に右肩に大袈裟に包帯を巻いたトラウトがいた。
 ”重いだろ!でも今は満足に振れない。この怪我がいつ治るのか見当がつかないんだ”
 右ふくらはぎの張りの為に負傷者リスト入りしてた筈だが?ひょっとしたら右肩も痛めてたんだろうか・・・

 不思議に思ってると、再び大谷がやってきた。
 ”僕もメジャーに来た頃は、トラウト選手みたいにヘッドの重いバットを使ってたんだよ。でも打率重視にして、芯の部分が長くて細いバランス重視のバットにしたんだ”
 私は彼のバットを振らせてもらった。力を入れなくてもビューンとスムーズに振れる。
 ”これだから軽く振っただけで、あんな異次元の飛距離を生むんだね”
 大谷は得意気そうだった。そして呟いた。
 ”君のも見せてよ”
 私は恥ずかしかった。というのも私のバットは870gほどの少し大袈裟だが、軟式野球で使うような軽いバットだったからだ。
 大谷は私のバットを取り上げると、笑いながら軽く振った。驚異のスィングスピードだ。
 ”これだったら、3割は確実に打てるかな”

 私は少し説教臭くなった。
 ”バリーボンズも900g前後の軽いバットを敢えて1インチ短くして振ったんだよ。だから73本も打てたんだ。ステロイドだけの恩恵じゃない”
 ”僕のもそんなに変わんないよ”
 私はもう一度彼のバットを握ってみた。確かに、重くは感じなかった。
 実を言うと、バットに何か仕掛けがあるのだろうか?と、私は大谷を疑ってたのだ。
 彼が次の打席に向おうと、ベンチを出た時、夢から覚めた。


夢から覚めて〜それでもボールはよく飛ぶ?

 事実、大谷は今季になってバットを変えた。
 長さは33.5インチ(85.09センチ)、重さは905g前後で大きくは変わらないが、バット全体の形状を芯部分からロゴマーク付近まで太くし、芯の範囲を広くしたミドルバランスのバットである。
 大谷は新たなバットについて、”従来の方がトップに重さがある感じだけど、今年はどちらかというと均等かな”と説明する。
 均等(ミドルバランス)のバットは操作性が高いが、トップバランスの様に重みを生かし速く振る事ができない為、飛距離は劣る傾向にある。
 ”飛距離はその分、出にくいのかな。でもその分、フィジカルも強くなってる”とも語る。
 1m93、102kgの体格に大きな変動はない。しかし、手術を受けた右肘や左膝がリハビリにより以前より強化され、力の伝え方もより効率良くなった。
 ”どんなバットでも芯付近に当たれば本塁打にできるという自信はある。その分、<率寄り>のバットになってるのかな”(スポニチ)

 つまり、打率重視のバットが彼に躍動を支えてるのは確かだろう。
 今季の大谷は笑顔が多い。
 味方の活躍に手を叩いて喜び、叫び、自らも塁に出れば大きなガッツポーズを繰り出す。
 体に痛みや違和感がなく、思う存分全力でプレーできる楽しさが体全体から溢れている。

 夢の中の彼も全く同じだった。
 今の大谷は心底野球を楽しんでる。それが規格外のアーチを生み続ける原動力となってるのだろうか。
 私は、松中選手の前期モデルの硬式バットを手にした事がある。三冠王を取る前の打率重視のモデルだろうか、とても振りやすかった。このバットなら私でもそこそこの数字は残せるだろうと、幻覚を覚えたほどだった。
 それからバッティングセンターでは軽いバットを敢えて使う様にした。
 典型の”打てば三振守ればエラー”の私だが、力を入れなくても、凄い威力のある打球が飛ばせる様になった。面白いように強い打球が右へ左へと飛んだ。まるで夢を見てるみたいだった。

 これと全く同じ事を今の大谷は実践してる訳だ。
 夢の中で大谷が振っていたバットは、実は私が手にした松中選手のバットだったのかもしれない。
 夢の中で、私が手にした現実のバットが登場したとしたら?
 それにしても、メジャーのボールは飛びすぎると思うのは、私だけだろうか?