象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

たかがAI、されどAI〜「AI崩壊」に見る子役の限界とAIの限界と〜


 ”2030年、高齢化と格差社会が進展し、人口の4割が高齢者と生活保護者となり、その上、医療AI「のぞみ」が全国民の個人情報等を管理する時代。
 そんなある日、AI「のぞみ」が突如として暴走した。人間の生きる価値を選別し始め、殺戮を開始する。
 警察は、「のぞみ」を暴走させたテロリストがその開発者である天才科学者(桐生=大沢たかお)と断定し、逃亡する桐生を今度は監視AIが追跡する”

 サスペンスやホラーには、子役がメインになる傾向が強い。この映画も主役は、暴走するAIでも大沢たかおでもなく、”子役”だった。
 それでも前半の、医療AIが暴走する展開と監視AIが追跡するシーンは、それなりに見応えがあった。
 しかし後半になり、医療AIの暴走で閉じ込められた小娘が主役になった所で、緊張感のある展開が間延びしてしまう。
 個人的には、AIが暴走し、それを同じAIが追跡した時、どれだけの衝撃とパニックを引き起こすのか?人類はどれほど冷静に柔軟にAIを制御できるのか?
 つまり、医療AIと監視AIの駆け引きと、人間とAIとの三つ巴のせめぎ合いを、延々と眺めていたかった。


AIの可能性と限界と暴走する脳

 そういう私はAIに対し、肯定的でも否定的でもないし、悲観的でも楽観的でもない。
 AIはあくまで補助的なツールであり、メインなツールで使う事自体に無理がある。

 生身のアナログの脳神経と、それらを形成する微細なシナプス回路こそが、最強のAIな筈だ。
 脳の働きの基本は、ニューロン(神経細胞)で繋がる神経回路にあり、その配線がシナプス(伝達装置)を通じ、きめ細かく精密に形成される事で、脳の高度な働きを可能にする。
 ニューロンが筋肉だとすれば、シナプスを関節に置き換えると理解しやすいですね。

 人間は色んな経験をし、様々な学習を積み重ねる事で、アナログな脳の高度な神経回路が構築されるとも言われる。 
 つまり、ガリ勉や受験マシンでは、よくても脊椎反射系エリートしか生み出さないのか。
 故に、この湯豆腐みたいに温かく柔らかい脳みそも、自由度を持ち、幅広く正確に鍛えなければ、条件反射系の人工知能に呆気なく駆逐されるであろうか。
 しかし、この人工知能も条件反射系であるが故に、暴走すると止められない。”オッペンハイマー””陸の三馬鹿”じゃないが、暴走する脳は悪害の何者でもない(暇な人はClick参照です)。 

 AIには自動学習機能というものがあるが、この機能はコンピュータだけの特権ではない。人間にも当然、その機能は備わってる。
 私は今、”リーマンの謎”ブログ復活の為に、毎日少しずつだが、リーマンの書物を眺める様にしている。すると、夢の中でもリーマン的思考が自分を支配する様な幻想を覚える。
 アインシュタインを書けば、夢の中でも同じ様なブログを書いてる。つまり、学習は学習を生み出し、そして更に高度な学習を創造する。

 多分、偉大な数学者は寝てる時も、脳みそは必死で難題を追いかけてたのだろう。
 20世紀最高の数学者の一人であるエルデシュがそうであったように、彼の脳みそもまた、”24時間年中無休”だったのだ。

 一方でベルンハルト•リーマンは、1859年の論文の中で、ある”予想”を仄めかした。以降、その予想は難関不洛の難題と呼ばれる様になる。
 そこで1953年、”人工知能の父”アラン•チューリングは自ら開発したチューリングマシン(後のコンピュータ)を駆使し、”リーマン予想”の化けの皮を剥がそうと試みたが、反例すら割り出せなかった。
 その後もスーパーコンピュータを使い、反例を割りだそうとするも、10兆個まで正しい事が判明しただけで、スーパーAIが70年近く掛かっても、リーマンの領域には達してない事が証明されただけである。


融通の利かない頑固な脳?

 しかし今や、その数学の領域で、AIの活用が積極的に進められている。特に、数理科学ではAIの活用は必須である。と同時に、AIエンジニアには数学は不可欠とされる。
 実際に、2045年にはAIが人間の能力を超え、そのAIが、数学の研究でもコンピュータとは比べ物にならない程の大きな影響を及ぼすとの声もある。
 確かに、数学を極めて”計算バカ”になるくらいなら、AIに頼った方が学習効率とパフォーマンスはずっと良い筈だ。

 アナログの脳を効率よく鍛えるには、生身の多種多様な経験が必要だとされる。そうする事で高度で自由度の高いシナプスが形成され、高次で柔軟な伝達処理を可能にする。
 脳みそが創り出すアナログのシナリオは無限である。しかし、AIが作り出すデジタルのシナリオは、たかが有限である。しかも、そのAIは暴走する確率が高い。
 勿論、人間の脳も暴走するが、”温かい脳”である情緒を鍛える事で、抑え込む事は可能である。
 つまり、AIの”冷たい脳”は、一方通行型で条件反射系の不可逆な、不安定な時限爆弾を持つ硬直した回路に過ぎない。
 一方で、人間の脳(シナプス)には可塑(かそ)性があるとされる。つまり状況に応じ、思考を柔軟に自由に変形できる回路なのだ。

 映画「AI崩壊」を見て、子役をメインにするシナリオ”展開”に限界がある様に、AIをメインにするにも、シナプス”回路”に限界がある事を教えられた様な気がする。

 結局、AIも脊椎反射型の頑固な”冷たい脳”に過ぎないのか?