象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

理論が単純なだけにお金が掛かる〜次世代・核融合発電の限界と幻想と可能性

 「断酒と剪定作業・・」に寄せられたコメントで、核融合発電の事が紹介されてた。
 太陽光発電と来れば、次世代では核融合発電となるのだろうが、昨日のNHKBSスペシャルでは「太陽を作り出す者たち」と題して、33か国が参加する国際プロジェクト(=ITER)の現実と内幕が紹介されていた。

 ”夢の核融合発電”とは言っても、理論的には単純で、軽い原子核を持つ重水素とリチウム(3重水素)を超高温・超高圧で融合反応させ、ヘリウムの様な重い原子核を生成する。つまり、太陽内部で行われてる核融合を人工的に作り出し、原子力発電(核分裂)を上回るエネルギーを取り出す訳だが、これには1億度以上の超高温に加熱された、原子核と電子が自由に動き回る”プラズマ状態”が必要とされる。
 故に、このプラズマを制御する事が核融合発電の大きな壁となり、数百万度にもなる超高温を維持し、瞬間的に核融合を起こす装置など技術的なハードルは高い。

 因みに、太陽内部では70%を構成する水素が圧縮されて高気圧になり、温度が上昇する事で中心部の水素原子がヘリウム原子に変換される。この融合反応が起きる事で膨大なエネルギーが生み出され、太陽は高熱や光を放出し続けるが、太陽を人工的に作ろうというのが核融合発電である。例えば、3Lの海水中に含まれる重水素0.1gとスマホ電池1/3個分に含まれるリチウム0.3gだけで、日本人1人の年間電気使用量7500kWhの発電ができるとされる。
 一番のメリットは、核融合発電の過程でCO2 を含め、放射性排出物が殆ど出ない点で、融合の際に少量の放射能が発生するが、すぐに減衰し、放射性廃棄物の処理コストが削減できる。
 次に、核融合発電の燃料は主に重水素や(リチウムが原料の)三重水素で、1m³当りの海水には重水素が33g、リチウムが0.2gが含まれ、燃料はほぼ無尽蔵にある点も大きなメリットである。更に、原子力発電と比較して安全性が高く、比較的少量の中性子が発生するが、高レベルの放射性廃棄物は発生しない。また、システムの電源を切れば反応が停止し、核反応の暴走が起こりにくい。
 その上、核融合発電では1gの燃料で石油8㌧(タンクローリー1台)分のエネルギーが得られるが、原子力発電ではウラン1gで石油1.8トン分とされ、4倍以上もエネルギー効率が高い。
 以下、「核融合発電とは?」を参考に大まかにまとめます。


核融合発電って、実際にはどうなの?

 その一方で、技術面やコスト面の課題を多く抱える。核融合によるエネルギー生産は、1920年代から進められてきたが、約100年が経った今も実用化はなされていない。
 その理由の一つに、プラズマ制御の高いハードルがあるが、原子を核融合させるには燃料をプラズマ状態にする必要がある。既述の様にプラズマは超高速で移動する為、その制御と維持が長年の課題だった。近年では、幾つかのプラズマ制御の実証実験が行われ、臨界プラズマ条件こそ達成されてはいるが、核融合を起こす超伝導コイル、プラズマの排熱機構、ブランケットなど、プラズマの制御を可能にする技術や融合炉の開発などに技術開発が必要な項目が多数あるのが現状だ。
 また核融合発電では、必要な設備や技術の開発に大きなコストがかかる点もデメリットで、日本・アメリカ・中国・韓国・ロシア・インド・EUと33の地域が参加する国際プロジェクト(ITER)計画では、実験炉の建設に約2.5兆円もの膨大な資金が投資され、内閣府の原子力開発検討分科会によると、実用化後の核融合炉の建設コストは約4900億円が見込まれ、核融合発電の実用化には更なるコスト低下が課題となる。
 事実、核融合発電の実用化は技術的な実現性に取り組んでる段階で、連続核融合反応や長時間燃焼の実現、原型炉の建設に必要な核融合炉工学の構築など、達成すべき課題が多く、日本での核融合発電は2050年頃の実用化を目指し研究開発が進むという。

 ITER計画では2007年に建設が始まり、20年にはITERの組み立てを開始され、初期運転は25年に始まる予定だったが、9年遅れの34年に運転を開始する予定だ。また、燃料に重水素と三重水素を使う本格的な核融合運転への移行も、当初の計画だった35年から39年への延期が決まっている。
 一方、ITER計画とは別に各国も開発を進め、中国は2027年に実験路を稼働し、その後商業炉の前段階となる原型炉を開発する予定だ。米国は2030年代に民間主導で原型炉を建設し、40年代に商業運転の開始を目指す他、英国も40年までに原型炉を建設する予定である。
 事業化を目指して次々とスタートアップが立ち上がている海外に比べると、日本は当初出遅れてはいたが、民間主導プロジェクトFASTや大学主導のスタートアップの動きも活発になり、2030年代の発電実証が実現できれば世界をリードする事も可能になるという。

 因みに、核融合発電は”地上に太陽を作る研究”とも言われるが、以下の3段階に分かれ、第一段階では核融合反応によるエネルギーが大きくなる状態を、第二段階では核融合エネルギーが長時間持続する状態の達成を、第三段階では実際の発電および経済性向上の達成が目標となる。現在は第二段階の途中だが、技術的に困難な課題が多数存在し、例えば、核融合反応を起こすには1億度超という高温まで燃料を加熱し、プラズマ状態にする必要があるが、そんな高温下で固体の状態を維持できる物質は存在しない。
 故に、プラズマをどの様な容器に閉じ込めるか?が大きな課題であり、磁場やレーザーなどを用いた技術が研究されてる最中にある。実際に発電を行うのは第三段階であり、核融合発電実用化までの道のりは未だ道半ばとなる。
 

最後に〜錬金術と夢物語と核融合発電

 核融合発電の方式には、①磁場閉じ込め方式②慣性閉じ込め(レーザー)方式の2つに大きく分けられる。まず前者は、核融合で発生するプラズマを強力な磁場で閉じ込める方式で、ドーナツ状の容器で閉じ込める”トマカク型”と螺旋状のコイルで閉じ込める”ヘリカル型”に分かれるが、トカマク型はプラズマを閉じ込める性能が高く、核融合装置の構造がシンプルな点が特徴だ。ITER計画の核融合実験炉や国立研究開発法人・量子科学技術研究開発機構(QST)の臨界プラズマ装置”JT-60”はこの方式を採用する。
 但し、近年注目されてる”磁場反転配位(FRC)型”も①方式の1種で、燃料に水素とホウ素を用いる。このFRC型は、核融合で中性子が発生しない点がメリットで、核融合炉の構造を簡素化でき、エネルギー効率が高い技術を適用できる点から近年注目されている。
 次に後者は”レーザー方式”とも呼ばれ、燃料粒子にレーザー光を当てて加熱し、慣性の力で粒子を留める為に閉じ込め磁場を必要としない。2022年12月、この方式により米国のLLNLが照射レーザー光の約1.5倍のエネルギー抽出に成功。工学的な課題は残されてるものの、実用化の実現が2030年代後半から40年代にかけて早まる可能性が期待される。

 日本政府は核融合発電の実証を2030年に行う方針を打ち出し、量子科学研究開発機構や自然科学研究機構、大阪大レーザー科学研究所が中核となり、設備を拡充する方針だ。スタートアップ企業による開発も進められ、核融合発電の実証プロジェクトFASTには、京都フュージョニアリング、三菱商事、三井物産などの企業と、球状トーラス型核融合実験装置を利用した東京大学を始め、京都大学や東北大学などが参加し、30年代の発電実証を目指す。
 また、融合炉の開発を目指すスタートアップもあり、東京都ヘリカルフュージョンは自然科学研究機構などと共同で開発を進め、2034年に初号機の完成を目指す。
 大まかな計画では、中国が2030年代で米英は40年代、EUや韓国は50年代の実用化を目指す状況だが、日本がどう立ち向かうかが見どころでもある。

 確かに、核融合発電の実用化に向け、莫大な資金調達に必死な為か、夢やメリットばかりが強調されるが、現実と足元を見れば課題が多すぎる。一方で、仮想通貨やお財布ケータイに使われてるECC(楕円曲線)暗号みたいに、理論が難しい程に技術的ハードルは低く、簡単に実用化される傾向にある。
 だが、核融合発電では理論が単純で、燃料は安定的に供給でき、有害なCO2や放射性廃棄物を出さない部分だけが注目され、肝心の技術的困難さや実験段階でも約2.5兆円もの莫大な資金が掛かる事は隠されてきた。
 NHKBSでは「太陽を作り出す者たち」のタイトルで紹介されていたが、錬金術と同じで、科学者のエゴや人類の強欲が見え隠れしてる様にも思える。事実、夢の様な核融合発電を実用化するよりも、色素型光発電の方が現実的でコストも低くて済むし、日常における電気の無駄遣いを削減にした方がずっと地球に優しい筈だ。

 それに、”太陽を人工的に封じ込める”なんて事が現実的に可能なのか?人類はいつからそんなに偉く傲慢になったのか?
 核を生み出したから地球を支配したと思いこんでるのなら、勘違いも甚だしいし、戦争すらなくせない人類に、太陽を支配できる筈もない。勿論、研究するのは勝手だが、国民の貴重な税金を錬金術の様な絵空事に投資して欲しくない。
 TV画面には、ITER計画に携わる役員らの面々が映し出されていたが、彼ら彼女らがひたすら無謀な夢を追う浅はかなインチキ詐欺師の様に思えたのは私だけだろうか・・・事実、トランプ政権が来年のITER計画への投資予算を1/3以下に削減したのは大正解だったと思う。