
先日の”その13”の冒頭でも紹介した「方程式のガロア群」(金重明著)ですが、私にはエヴァリスト・ガロアとガロア群を理解する大きな手引書となりました。
しかし、3次方程式のガロア群で頓挫し、ガロアを巡る旅は終わりかけたんですが、「天才ガロアの発想力」(小島寛之著)との偶然の出会いがガロアを巡る旅を見事に復活させてくれました。
そこで今日は番外編として、金重明氏から眺めたガロア群と小島寛之から眺めたガロア理論を少し比較してみたいと思います。
勿論、全てが正確な筈もないですが、これからガロア理論を理解する上での参考になればと思います。
解の置き換えとガロア理論
序盤は金重明氏の「方程式のガロア群」方が解り易かったんですが、3次元方程式の解法となると、家系図(ハッセ図)と群の対称性を使った小島寛之氏の方が解り易いですかね。
勿論、ガロア群の骨組みを理解するという点では金重明氏の方がとっくみ易いと思います。
でも、金重明氏の”ガロア群”の概念でみれば、正規部分群を置換群とみなし、解の置き換えから一般解を持つ事が導けます。
つまり、”その12”でも紹介した正規部分群の剰余類が巡回群(可換群)になる事をガロアは発見し、このガロア系列という”簡単な群”を見つける時、四則とルートだけで解ける。
以下、UNICORNさんのコメントを紹介です。
金重明氏は方程式の解法を”解の置換”に求めました。これはアーベルが初めてやった偉大なる手法ですが、ガロアはこの解の置換を体や群に置き換え、自己同型に繋げる事で統一した明確な解法を発見します。
解と係数の全てを添加した添加したガロア拡大体の自己同型こそが”ガロア群”だとする、金重明氏の説明の方が判り易いかもしれません。
”その2”で書いた様に、”方程式の背後に解の置換群という構造が存在する”事をガロアは見抜いてました。つまり、解を単純に求めるではなく、解が導き出される構造を体や群という新しいツールを使い、シンプルな形に求めました。
一方で金重明氏は、正規部分群を置換群として捉えました。故に、解の置き換えにより、係数から解を四則演算とべき根(ルート)だけで表す事が可能となるとしました。
故に、ガロア群が正規部分群の列(ガロア系列)になる時、その群は可解群になり、一般解を持つと。
こう見ると、金重明氏は限りなくアーベル寄りだし、小島寛之氏はガロア寄りなんでしょうか。
つまり、解の置換の”ガロア群”に重きをおいた金氏と、解から作った自己同型の群の構造(ハッセ図)というガロア理論に重きをおいた小島氏とも言えますね。
正規部分群と剰余類
因みに、”その12”の最後でも述べましたが、巡回群は可換(群)ですから、共役な部分群が存在し、その中でも自身同士が重なる共役な部分群を”正規部分群”と呼びますが、共役変換により不変な部分群とも言えます。
正規部分群の剰余類(fH=Hf)が巡回群、つまり可換群になる事をガロアは発見し、このガロア系列という”簡単な群”を見つける時、方程式は四則とルートだけで解ける。
これこそが小島氏が主張する正規部分群を核としたガロア理論なんですね。
そこで、剰余類とは非常に抽象的に聞こえますが、群Gの部分群であるHの要素をfとする時、左剰余類fHとは部分群Hの左から演算fを掛ける事で、故に対称性をズラすと呼びます。
対称性と蜜な関係にある群ですが、剰余類により”対称性をズラす”事で群Gの要素は完全に重なるか否かで、ズラさなければ重なる事はなく区別出来るから、今まで見えてこなかった群Gの要素を明確に判定できる様になります。
右剰余類Hfも全く同様ですが、左剰余類と右剰余類が重なる部分群を正規部分群というんですね。
つまり、剰余類というツールを使う事で群の構造を見え易くした。
アーベルは”5次方程式には一般的な解法は存在しない”と漠然と書きました。それでガウスはキレました。
しかし基本理念はガロアと同じで、アーベルが発見した様に”解の置換”にありました。その解の置換の陰に隠れてた群論をガロアは新たに展開したんですね。
そこで若き天才ガロアは、虚数解を加えて複素数の体を作り、”5次以上の方程式では複素数解は存在するが、四則の計算とルートだけでは求める事できない”を導きます。
”青銅よりも永続する記念碑、500年分の仕事を遺してくれた”と称されたアーベルですが、ガロアもその記念碑をしっかりと受け継いでたんですね。
補足〜アーベルとガウス
しかし、”一般的に”ではなく”代数的に”解くとすべきでした。そこにガウスが切れたという噂ですが、未だに真相は不明のままです。
その2年後、アーベルは詳細な証明をクレルレ誌に載せますが、「近世数学史談」の高木貞治氏は、”ガウスはその証明を真っ先に読んだと思いたい”と述べてます。
勿論、今では”代数的に”解くとは”四則とルート”で解く事と同義なので、当時のアーベルが一般的に解くと書いても、ガウスが血相を変えて怒る様な事でもないとも思えますが、高木貞治氏もこの様なガウスのゴシップは聞きたくないと言ってますね。
一応、補足でした。